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<雑学1>クラシックギター
音程(ピッチ)と温度(気温)の関係
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例えば、寒い部屋で調弦し、そのまま暖かい部屋に移動したら音程はどうなるのか?
実験の結果と解説
実験:気温7℃で調弦し、22℃の部屋で周波数(=音程)を測定しました。
結果は下表です。参考として、スチール弦のフォークギター(アコギ)も調査しました。
ナイロン弦は差がプラスであり、温度が上がると音程も上がることがわかります。特に3弦が大きい。(スチール弦では逆に下がります。)
その原因として、数々の説がネットで流されていました。それらの説に対して、解説します。
説 | 主張点 | 解説 | 評価 |
胴体膨張説 | 木の胴体が温度で伸びてナイロンを引っ張り、音程があがるという説 | 木の膨張は小さい。またスチール弦では音程が下がることに合わない。わずかは影響する。 | ×〜△ |
音速説 | 気温があがると音速も上がる。波長が一定なら周波数が上がる。 | ギターの音程(周波数)を決定するのは空気中の音速ではなく、弦を伝わる音速のことである。スチール弦の結果とも合わない。但し、管楽器ではこの音速説が成り立つ。 | × |
密度説 | ナイロンが膨張して密度が下がる。密度が下がると周波数が上がるという理論式がある、 | 理論式には線密度が関係しているが、線密度は両端が固定されていれば変化しない。 | × |
熱収縮説 | ナイロンは基本的に熱で収縮する。そのため張力が上がり音程が上がる。 | ナイロンは基本的には熱で膨張する。熱収縮は高温での溶融後のことである。 | × |
ゴム弾性説 | 一定の張力下で、ナイロンを加熱すると、収縮する。その結果、張力が上がり、音程も上がる。 | この性質をガフ・ジュール効果といい、ゴム性を持っているナイロン製ギター弦の状態がこれに当たる。 | ○ |
上記のように、”ゴム弾性説”が正しい、というのが結論です。
この件については、YAMAHAのHPでも取り上がられ、平成24年1月までは熱収縮と説明していましたが、私がこれに疑問を呈し、
正解を調査するよう求めた所、ガフ・ジュール効果という訂正がなされました。YAMAHAのページ
なお、スチール弦では音程が下がるのは、スチール弦の熱膨張によるものです。
誤っている諸説はネットで流されていたものですが、どれも一見もっともらしい説です。ネットの怖さですね。
【参考】理論式は
音程(周波数)=音速/波長=√(張力/線密度)/(2×弦長)